家族写真を撮影する時というと、多くの人は朝からワクワクするものだと思います。
私が小さい時には、家族写真を撮るというと、かしこまった格好をして写真館に行くか、家庭のカメラで撮るかでした。
我が家も、時おり父親がカメラを持って外出して、家族写真を撮りました。とにかく、うちの父親はせっかちなんです。
私と母が、撮る場所や角度を色々と考えていると、「まだか」とイライラとした父の声。当時、私は中学生でちょうど反抗期の真っ只中。父と壮絶な大ゲンカを繰り広げました。
父も私も負けず嫌いな性格をしていて、どちらも引くことはありませんでした。
もう写真なんて撮れる状態ではありませんでした。私も半泣きになっていて、父も顔を真っ赤にしていました。その時です。
「はい、チーズ!」
母の声がして、私も父も思わずカメラの方を見ていました。カシャッという音と共に、シャッターが切られました。と、母がニッコリ笑って、「ケンカしていても、やっぱり笑顔になるのね」と言ったんです。不思議なもので、「はい、チーズ!」という言葉は、まるで魔法の言葉のように笑顔にしてくれるのです。そのことに気がつき、私も、父も気がついたら笑顔になっていました。
出来上がった写真は、決して良いとは言えませんが、我が家にとっては思い出の1ページになりました。
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